2013年2月3日日曜日

マニー・パッキャオ


先週NHKで一人のボクサーの特集をやっていた。
その名はマニー・パッキャオ。
フィリピン人ボクサーで、有名なオスカー・デ・ラ・ホーヤに継ぐ史上2人目の6階級制覇を成し遂げた実力者のようである。

私は、もともとボクシングは嫌いではなく、たまに観ていたりしたし、かつてマイク・タイソンの試合には随分熱狂していた事もあるくらいなのだが、この選手の事はこれまで全く知らなかった。

6階級制覇と言われても、今は階級が細かく分かれ過ぎているからピンとこない。
昔はボクシングの階級は、フライ級、バンタム級(矢吹丈はバンタム級だった)、フェザー級、ライト級、ウェルター級、ミドル級、ヘビー級などとシンプルだったが、今はスーパー○○級やクルーザー級、ミニマム級など複雑に分かれ、何と17階級もあるようだ。
○階級制覇という言葉もよく聞くし、ナンボのものかと思ってしまう。

しかし、デビューから20キロも上のクラスで戦っていると聞くと、「それは凄い」と単純に思ってしまう。ラスベガスを中心にペイパーヴュー方式で行われるアメリカのボクシング興業は、巨額のマネーが動く。マニーの試合は人気が高く、なんとファイトマネーは1試合30億円だと言う。もう庶民には想像もできない。

確かに番組で垣間見るマニーの試合スタイルは、派手なノックアウトシーンが多く、観客の興味がそそられるのもよく分かる。
だが、私が興味をそそられたのは、ファイトスタイルではなかった。
ケタはずれの報酬を稼ぐマニーだが、普段は出身地のミンダナオ島に住み、地元の古ぼけたジムで幼馴染みとトレーニングをしている。

フィリピンでもミンダナオ島は貧しい地域で、マニーも子供の頃は日々の食事にも事欠く有り様だったようである。見事なサクセスストーリーだが、それも興味の対象にはならない。
興味深かったのは、今でもミンダナオ島に住んでいることだった。
普通、ハリウッドあたりに豪邸を建てて、贅沢三昧の暮らしをするだろう。
それがアメリカンドリームで、みんなそうしているし、結局マイク・タイソンもそれで身を持ち崩したのではないかと思っている。

アメリカでは一部の金持ちが富を独占しているから、そうしていても不思議はないし、当然そうしていると思うのだが、彼はいまだにミンダナオ島に住んでいる。
そして有り余るファイトマネーで、学校を作り、体育館を作り、台風で深刻な被害を受けた地域に15,000人分の緊急支援をしている。
富を独占せずに、生まれ育った地元に還元し、自分もともにみんなと暮らしている。
そんなところに心が動いてしまった。

昨年12月に行われた試合。
故郷ではみんなが一台のテレビを囲んで応援している。
しかし、その試合でマニーはライバルに壮絶なノックアウト負けを喫する。
負けて故郷に帰った彼を迎えたのは、地元の人々の熱狂的な歓迎。
ろくに舗装もされていない道路の沿道で、大人から子供までみんなが彼の乗る車に殺到する。
彼の手にしたものは、巨額のドルではない。

33歳というボクサーとしては高齢だと思うが、まだまだ引退はしないようである。
それは当然ながら、金目当てではないだろう。
人間だから当然の如く褒められない部分もあるだろうが、褒められる部分は素晴らしいと思う。

日本人にも世界チャンピオンはいるが、ラスベガスで試合をするような選手はいない。
それはなぜなんだろうとふと思う。
亀田兄弟とか少し前の浪速の辰吉とか人気選手がでたりするが、いかにもローカルチャンプである。ハングリー精神の違いというのもあるかもしれないが、それだけだろうかとも思う。
詳しい事情はわからないから何とも言えないが、その理由には興味があるところだ。

マニーの次回の試合がいつになるかはわからないが、ちょっと注意していて、次回はWOWOWあたりでやるだろうから、是非ともTV観戦したいと思うのである・・・


【今週の読書】

「自分のアタマで考えよう」ちきりん




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