2010年9月18日土曜日

これからの正義の話をしよう

今、「これからの『正義』の話をしよう」(マイケル・サンデル著)という本を読んでいる。これが面白い。もともとハーバード大学の人気講座を本にしたらしいのであるが、タイトルにある通り『正義』に関する議論なのである。

5人の命を救うために1人を犠牲にする事は正しいか、とか。
フォード社が爆発の危険性がある欠陥を発見したのに、リコールにかかる費用と実際に爆発が起こって犠牲者が出た場合の賠償コストを比較して、リコールを見送ったとか。
アフガニスタンで作戦を展開していた米軍特殊部隊の偵察隊が地元の羊飼いの親子に遭遇。
アルカイダに通報されるのを防ぐために部下が親子を殺すように進言してきたが、あなたならどうするとか。

ちなみに最後の例では、親子を殺す事を躊躇した隊長は彼らを逃がす(人間として当然だ)。その結果、親子はアルカイダに通報、彼らの偵察隊はアルカイダに包囲され、部下は全滅、救出に来たヘリは撃墜され乗っていた16人も死亡という結果になったという(ちなみにその事件は映画化『ローン・サバイバー』されている)。読みながらあれこれと考えさせられる。

読みながら2年前に観た 「ダークナイト」という映画を思い出した。
バットマンの映画なのであるが、これが善と悪、正義と悪との哲学的な対立を描き、ストーリーもさることながら、その重厚な問いかけに圧倒される優れた映画だ。

悪のジョーカーがゴッサムシティーを闇に包む。
正義を代表する検事デントがこれに立ち向かう。
しかしジョーカーは彼を捉え、さらにバットマン=ブルース・ウェインの愛する女性レイチェルを捕らえる。二人を離れた2カ所に監禁し、それぞれ同時刻に爆発する爆弾をセットする。そしてバットマンにどちらを助けるか選ばせるのである。

観客もバットマンがどちらを助けに向かっているのかわからない。
二人は無線で状況を知る。
デントはレイチェルを助けに行けとバットマンに叫ぶ。
デントは表向き大衆の前に正義の味方として立てないバットマンになり代わり、市民に希望を与える存在だ。刻一刻と爆発時刻は近付く。

自分だったらどうするか?
ちなみにバットマンは私の予想を裏切って(ジョーカーの策略で)デントを助けてしまう。
バットマンの姿を見たデントは絶望の叫びを上げ、爆弾は爆発する。

正義が単純に正義で、悪が単純に悪だったらこんなに簡単な事はない。
しかし、ジョーカーに協力した人たちは、ただの金欲しさだったりではなく、家族の病院代がほしくて協力したりしているする人もいるのである。
病気に苦しむ家族を前にして、果たしてジョーカーの誘いを断れるだろうか?

「スターウォーズ・エピソードⅢ」のアナキン・スカイウォーカーがフォースの暗黒面に捉えられてダースベイダーに落ちてしまうのも、私利私欲ではない。
純粋に愛する女性を救おうと思う行為だった。
だからこそ、この映画も面白いのだ。

あれこれ考えてみると、正義というものは結局相対的なものだ。
アメリカにとっての正義は、アルカイダにとってのそれとは違う。
アルカイダにとっての正義もまた然り。

9.11は許されざる犯罪ではあるが、石油利権獲得のためにイラクに攻め込んだアメリカによって大勢のイラク人が死んでいる。アメリカは極東軍事法廷で日本の指導者を戦犯として処罰したが、その「正義の国アメリカ」は、空襲で30万人以上の無抵抗な日本国民を虐殺している。勝者の高らかな正義の宣言の前に、敗者の正義は踏みにじられる・・・

まだこれから後半だが、簡単な事例からカントの哲学まで登場してきてなかなか面白い。
さすがハーバード大学の人気講座だ。
こういう講座がある事自体がアメリカの大きさなのだと思う。
こういう授業、受けてみたいものである・・・


【昨日の読書】
「これからの『正義』の話をしよう」マイケル・サンデル
「Invitation」小池真理子他
    

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