2009年7月20日月曜日

ホタル

 東京では野生のホタルにはお目にかかれない。もっとも23区外では、ところどころ見られるところもあるらしいと聞く。私は子供の頃、長野県にある祖父の家を訪ねた際、一度だけ野生のホタルを見た経験がある。祖父の家から歩いて数分の小川のほとりで、小さな光が浮かび上がっては消え、揺れるように飛ぶホタルを生まれて初めて見たのである。たぶん、小学校低学年の頃だったと思うが、その時の記憶は今でも強烈に残っている。それ以来、野生のホタルにはお目にかかっていない。

 高島平にあるホタル飼育施設が、この時期飼育しているホタルを夜間に一般公開している。東京12チャンネルの「出没!アド街ック天国」という番組で放送されていたのを、昨年偶然見つけ、「近くだし行って見るか」と昨年初めて家族で見に行ったのだ。繊細な生き物であるせいか、見学時間も一瞬であった。「立ち止まらないで」と言われ、さっと見学しただけであった。それでも子供たちにとってはいい経験だったみたいなので、今年も再度行ってきた。

 並んで整理券をもらわないといけないほどで、地元ではそれなりに知名度のあるイベントのようである。飼育ハウスに入ると、ほとんど明かりのない中で無数のホタル(ヘイケボタル)が飛び交っている。たいがいの人は入った瞬間に歓声を上げる。かすかに明るいハウス内で、かなりの数のホタルが飛び交う様は幻想的である。

 中では人工の川が流れている。ひんやりとした室内にしっとりとした水の香が漂う。あちこちでホタルが光る。あるものは飛び、あるものは止まったまま。私が子供の頃見たのは自然のままのホタルであったが、数でいけばここの方が圧倒的に多い。自分の子供の頃の体験が今も強烈に残っている以上、子供たちにとってもここで見たホタルはずっと後々までも印象に残るかもしれないと思うが、たぶんそれは間違いないだろう。

 身の回りにホタルが自然とたくさんいた時代はどうだったのだろう。あんまり物珍しくは思わなかったのだろうか。日々の暮らしが大変で、ホタルを愛でる余裕なんかなかったのだろうか。きれいな水辺にしか住まないというホタル。社会の発展はそんな水辺をホタルたちから奪っていった。

 こんな形でしかホタルに接する事のできない我々ははたして不幸なのか、幸福なのか。ホタルの儚い光は、現代の忙しい日常生活から、しばし異なる世界に誘ってくれる事だけは確かである・・・


    
     

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