2009年4月29日水曜日

時計1

私はいくつか時計を持っている。
まあ大概の人は少なくとも2~3個は持っているものであろう。私もそうなのであるが、そのうちの一つはもう長く使っているものだ。セイコーの純国産腕時計である。
ちょうど19歳の春、大学の合格祝いとして父親に買ってもらったものだ。だからもうかれこれ26年使っている事になる。

それまでは大して必要性を感じなかったので、これといった時計はもっていなかった。
それを知っていたのか、大学に受かった時に突然父親が「時計を買ってやる」と言ってきたのだ。
もともと自立心が強かったのもあって(何せ高校生になってからこずかいはもらっていなかったのだ)、親に何かをねだるという事もなかったし、親もわざわざこれを買ってやるということもなかった。だから突然父親が「時計を買ってやる」と言ってきた事に少々驚いた事を覚えている。

父親からすれば、浪人したとはいえ息子が無事大学に受かり、(しかも予備校にも通わず学費の安い国立に行ったから随分安上がりだったのだ)少しは何かしてやろうと思ってくれたのかもしれない。あるいは自分が行けなかった(行きたかった)大学なるものに息子が行く事になり、そのことが誇らしかったのかもしれない。

それはともかく、父親と二人で買い物に行く、などという事はそれまでほとんどなかった事であった。買い物というと、ほとんど直感でパッと物を買うタイプである私は、普段あちこち見て回ってから買うなどという事はなかったのであるが、(それは今に至るまで変わっていない)その時ばかりは何件かハシゴした。父親の何か思いのようなものを感じていたためか、中途半端に妥協したものを選びたくはなかったのだ。

そうして何件か回った後で見つけたのが上の腕時計だ。
見た瞬間に気に入ってしまった。
そしてこれが、自分にとって初めてまともに買った腕時計となった。
それをはめて19歳の春、新しい生活を始めたのだ。

以来ずっと私の腕で私と同じ時間を刻んでいる。
その後いくつかの新しい腕時計を手に入れたが、だからといってこの時計を隅に追いやるつもりはさらさらない。逆に使わないとダメになるかもしれないと思い、今でも週に1~2回はつけて出勤している。26年たってもいまだに若いものに遅れる事なく動いているのはさすがメイド・イン・ジャパンだ。

もしも誰か奇特な人がいて、この時計を譲ってくれと言ってきても(100万円までなら)、その場で断る自信がある(それ以上だったらちょっと考える)。
いつまでも、できる事なら定年を迎えるその時まで使い続けたいと思っている。
まだまだ長い人生、これからも私の大切な時を刻み続けてほしいと思うのである・・・

    

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